最高裁判所第三小法廷 昭和38(オ)121 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人生駒定三郎の上告理由第一点について。
原判決の引用する一審判決は、本件競売手続の基礎たる抵当権設定当時の家屋に
ついて上告人のいわゆる取りこわし新築工事のなされた状態を、その挙示の証拠に
基づいて認定し、右工事のなされる以前の家屋の状態と訴外D商事株式会社が競落
した当時の本件家屋の状態とを比較し、本件家屋がその前後を通じ全体として同一
性を失つていないものと判断しているのであり、右認定事実に照らせば、右判断は
正当として肯認するに足りる。論旨は結局、独自の見解に立つて原審の事実認定判
断を非難するに帰するから、採用できない。
同第二点について。
上告人は自己所有の電話加入権を売却して得た代金で訴外D商事株式会社に対す
る抵当債務の内金四万五五〇〇円を弁済したとの上告人の主張に対して、原判決の
引用する一審判決は、上告人は右電話加入権が売れた場合は精算の上で右売却代金
を右訴外会社に対する債務の弁済に充当する約束で訴外Eに売却斡旋方を依頼した
ところ、右訴外人の斡旋により右電話加入権を売却され、同訴外人は上告人のため
売却代金を買主より受領したのにも拘らず、同訴外人は上告人と精算手続もせず、
また右訴外会社に納入もせずにこれを着服してしまつたため、結局右電話加入権売
却代金は上告人の右訴外会社に対する債務の支払に宛てられることなくして終つた
と判示しているのであつて、右判示の趣旨は、上告人が右電話加入権の売却を訴外
E個人に依頼したというにあることが明らかであり、同訴外人においてこれを売却
した後その代金を上告人と精算することなく着服して前記訴外会社に納入しなかつ
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た以上、その他特段の事情の認められない本件においては、訴外Eにおいて上告人
に対して右契約不履行による責任を負担することのあるは格別、右訴外会社に対す
る前記債務が弁済されなかつたとの原審の判断は相当である。右訴外会社が実質的
には訴外Eの経営にかかるものであることは、原審の認定しないところであり、所
論代理もしくは表見代理の主張は原審においてなされなかつたところである。従つ
て、論旨は、結局、原審で主張判断を経ない事項を主張して、原審の適法になした
事実認定判断を非難するに帰し、採用するに由ない。
同第三点について。
論旨は、本件家屋が抵当権設定当時の家屋と同一性がないことおよび本件家屋の
競落代金が完納されていないことを主張して、原審の判断を非難するものであり、
結局原審の認定に反する事実を前提とする主張に外ならないから、採用できない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 柏 原 語 六
裁判官 石 坂 修 一
裁判官 横 田 正 俊
裁判官 田 中 二 郎
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